死の臨床に活かすコミュニケーション
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どうすればよいのかどのようなコミュニケーションが必要なのかおわりに 益子も村田も,医療現場で少なくない例を提示し,コミュニケーションの課題を挙げている。 前記課題に対し,益子は「こうした状況を回避するために,『カウンセリングスキル』と『カウンセリングマインド』が必要で,『カウンセリングマインド』とは,人の役に立ちたいとか,患者に何とか良くなってもらいたという善意の気持ちから成り立つ。医療者はこの気持ちを活かす『カウンセリングスキル』を身に着ける必要がある」と言い,そのためには「まずは頻回にナースコールしてくる患者の本当の気持ちを理解し,カウンセリングマインドとスキルをもって接すれば,患者から『私は寂しくてたまらない』などの本音が出てくるものだ。それならば,看護師は患者の寂しさに対処すればいいのである」1)と言っている。 村田は「すべてのコミュニケーションは内容と関係性という側面をもち,関係性が内容を分類し,規定する。つまり,伝える内容が同じであっても,関係が異なれば伝えられるメッセージは異なるのである」3)と言い,「その大声を『何かに苦しんでいる』のだと捉えて対応しようとする看護師は,その患者には,管理・抑圧するものではなく,援助者として現れる。それゆえ,対人援助の専門職は,常に,どのような場合でも相手の苦しみに意識の焦点を当て,相手に“援助者”として現れるようにしなければならない(筆者要約)」4)と言っている。 益子は「患者の本当の気持ち」を理解することが大事であり,村田は「相手の苦しみ」に意識の焦点を当てることが大事であると言っている。つまり「相手の本当の気持ち」を理解するためには「相手の苦しみ」に焦点を当てたコミュニケーションが重要になるということなのである。 先述したなかで益子が言う「カウンセリングスキル」とは,いかなるものなのであろうか。宗像は「カウンセリングというのは,悩みを聞いてアドバイスするコンサルティングとはまったく異なる。カウンセリングは,相手が自らの隠れた気持ちや欲求に気づくことを支援するものであり,そのためには鏡のようになって,その人自身が言ったことを繰り返す技術―ミラーリングが重要になる。ミラーリングが適切に行われれば,相手は安心し,自分の気持ちが整理でき,自分の隠れた気持ちや欲求に気づいてくる(筆者要約)」5)と言い,「カウンセリングで正しく『共感』すれば,相手に内省が起こり,自己決定効果が起こる」とも言っている。そしてそのようなカウンセリングの基本姿勢として『傾聴』が必要であり,またミラーリング効果を上げるスキルとして『沈黙』がある(筆者要約)」6)とも言っている。医療や福祉の現場では理論に基づいた適切なコミュニケーションスキルが求められるのである。 医療や福祉の現場におけるコミュニケーションの重要性は,そのコミュニケーション1 医療と福祉の場におけるコミュニケーションの重要性 9

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